2014年5月31日土曜日

DSM5 (1)

昨日、日本イーライ・リリー主催のDSM5の勉強会に参加してきました。米国精神医学会で発行する診断統計マニュアル(DSM)の第5版が昨年発行され、日本語訳が6月の精神神経学会を期に発売されるようです。DSM5について、私はあまり勉強してきませんでしたが、昨日の会はこれまでの薬物療法を主体とした製薬会社の会とは趣を異にして、DSM5の勉強会、つまり、みんなでDSM5をしっかり勉強しましょうという印象でした。精神疾患についてついては、こういう考え方もある、いや私はこうだという事がありますが、この会ではDSM5にはこう書いてあるということで、よく知っている人の勝ち!というような感じでした。筑波大学の松崎先生という方は、DSM5の語呂合わせ暗記法なども紹介して、参加者は一分与えられ覚えるという面白い発表を行っていました。

DSM5を勉強するという意味で、この会は非常に楽しめました。北大の斉藤先生、杏林の渡辺先生、座長の堤先生も、この診断基準は早い時期からよく勉強されているようで、参加者は正確な知識が身についたと思います。ある意味で、この会はDSM5を正確に知る会で、批判も賞賛もなく、きちんと覚えましょうという会だったのも、私はむしろありがたかったです。

DSM5については、私は2010か2011年ころから、カリフォルニアの恩師であるIrwin Feinberg先生(カリフォルニア大学ディビス校医学部精神科教授)から、いろいろと情報を聞いていました。Feinberg教授は、DSM5については批判的で、DSM IIIの作成に関与したSpitzer教授と連絡をとった話などをきかされました。

下記に、Feinberg先生の投稿したPsychiatric Timesの記事へのリンクを示します。

http://www.psychiatrictimes.com/articles/lets-call-whole-thing

私も、昨日の会を聞いて、マニュアルが変わるということが精神科の診断概念と強く関わることを改めて認識したので、DSM5については色々と勉強して、自分の思うことを少しずつ書いてみたいと思っています。ということで、今回は(1)としました。

2014年5月30日金曜日

イップス (Yips) (1)

ある新聞社からイップスについての問い合わせがあったので回答しました。イップスについては、スポーツと精神医学の関わりで非常に興味深いところなので、時々書いてみようと思います。まずは、その回答について。

===

・「イップス」とはどんなものなのか。定義は。
イップス(Yips)は、元来はゴルフのパット動作の際に、自分の思うような体の動きに反して、主に手首に不随意の力が加わり的を外してしまうということを示した言葉でした。その後、このような現象は様々なスポーツで認められるようになり、広く(多くは精神的な緊張を伴う、多分比較的時間をとれる場面で)不随意な運動により失敗をしてしまうことを示すようになっています。
定義は、上記のようなものだと思います。米国のメイヨークリニックのホームページを御覧ください。比較的信頼できる説明が出ています。
http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/yips/basics/definition/con-20031359

・医学的な「症状」なのか。
実際のケースをみていると、いわゆる「書痙」と同様の機序のものであるように思われます。
あまりよい解説ではありませんが、書痙についてはWikipediaも御覧ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B8%E7%97%99

・治すことができるのか。
治療は、薬物療法と非薬物療法にわかれます。薬物療法には、一般に神経症に用いる薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬、選択的セロトニンとり込み阻害剤(SSRI)などが効果があることがあります。また、非薬物療法は精神療法と行動療法にわかれます。精神療法では背景にある過度の不安をおこす精神的なメカニズムがあるかどうかについて明らかにし、これを解決する方向で行います。行動療法は、様々な方法がありますが、私の研究室の卒業生の石原心(アスレティックトレーナー:NHK出演歴あり)が開発した方法が良いように思います。彼は、とくに野球の投手のイップスの治療に効果を上げる方法をもっています。方法については、必要あれば本人に直接お問い合わせください。
http://www.havana-trainers-room.com/

・メカニズムなど。
不明です。私が考えるメカニズムとしては、運動は一般に練習によって大脳基底核や小脳などを含んだ皮質下の構造に、無意識の運動の回路ができます。この回路がスムーズに動けば、トレーニングによって養われたスムーズで正確な運動ができるわけです。一方このような回路は、ヒトが意識できる大脳皮質の働きによっても制御されています。イップスでは、このような大脳皮質の活動が、多分不安などの要因で過度に皮質下のメカニズムに影響を与えてしまうために、元来あった好ましい回路が十分に作動せず、不随意な運動となってしまう可能性があると思います。過度の意識が、運動学習された好ましい回路を阻害してしまうというメカニズムです。イップスが、不安が高い時に強く出て、治療によって不安が解消すると改善することもこの事と一致しています。

2014年5月29日木曜日

f.lux, twilightなど青白光カットアプリ

昨日のブログでも紹介した、青白光をカットするアプリを紹介したいと思います。

このようなアプリはどれも、コンピュータの出力を調整して、青白光の含まれる割合を少なくするものです。その結果として、画面は褐色になります。セピア調の写真を見ているような感じです。色も全く消えるわけではありませんが、大分あせます。しかし、使っているうちにだんだん慣れてくるので、私自身はさほど不都合を感じません。

アプリとしては、

Windows、 Mac、Linux用のアプリとしては、f.luxというソフトがお勧めです。私も使っています。
https://justgetflux.com/
上記がそのURLですが、検索すると日本語の解説なども出てくるので、読んでみると良いと思います。このソフトは、コンピュータのクロックをみて、夜の時間帯になると自動で画面から次第に青白光をカットしていくというもので、大変便利です。

しかし、iPhoneやiPadなどについては、このような画面の制御をアプリに許可していないようで、いわゆる、Jailbreak(脱獄)をする必要があります。つまり、Appleの許可していないアプリを無理やりインストールするということです。このやり方もネット上には情報がありますので見てみてください。こういうことが苦手な人は、iOSの場合はサングラスをかけるしかありません。

Androidの場合には、たくさんのこの手のアプリがあります。私は、Twilightというのを使っています。これも、時間になると青白光が減弱し、褐色の画面になります。これも便利に使っています。

実際に、患者さんの中にはどうしても寝る前にスマホを見るという人が居ます。こういう人に、診ないようにしたほうが良いと言ってもなかなかそれをやめることはできません。私は、このようなアプリを薦めています。実際に、これを使った患者さんは、「これを使うことで寝付きが悪いということは無くなりました」と話されています。これは、実際に意識して分かることかどうかは難しいことですが、私は実感としてこのようなアプリを使わなかった時に比べて、自然な眠気が出てくる感じが非常にあります。

みなさんも、是非お試しになられると良いと思います。

2014年5月28日水曜日

概日リズム睡眠障害(極度の夜型)を光で治療する

以前に、生物時計の仕組みや朝型夜型について解説しましたが、このような睡眠覚醒のリズムの問題がひどくなると、社会生活にも差し支えることになります。問題として最も多いのが極端な夜型の人です。このような人は、ある割合いて、多くは高校生くらいに顕在化してきます。朝が極端に苦手で、学校に行く時間に起きられず、毎日遅刻します。本人は、学校がいやだというわけではないので、早く起きられるように努力もするのですが、なかなか起きられません。午後からは学校に行って、クラブ活動もちゃんとやって帰ってくる人もいます。家でも勉強をして、明日は早く起きられるようにと、早めに寝るのですがなかなか寝付けず、明け方近くに寝つくと翌日はまた起きられないという状況です。このような状態は、概日リズム睡眠障害というカテゴリーの中の、睡眠相後退型というタイプで、治療の対象になります。睡眠相後退症候群とも言います。これは以前にも書きました。

このような人たちは、生物時計のリズムは、約24時間周期なのですが、タイミングがずれてしまっているわけです。通常は、体温は明け方に最も低く、午前中は体温が上がってきます。しかしこのような人たちは、リズムがずれているので、体温が上がってくるのが昼近くになります。そうなると、通常の時間帯、例えば7時に起床するのは、我々が夜中の2時か3時に起きるのと同じことになってしまうわけです。毎日そんな時間に起きて学校に行かされるわけですから、とても続かないわけです。

このような人は、しっかりとリズムを戻してあげなければいけません。そのために有効なのが光です。この説明をする前に、用語の説明をしましょう。

リズムを早寝早起き方向にずらすことを
   ⇒前進といいます
   ⇒これは、プラスの数字で表されます
   ⇒例えばプラス1時間ずらすというのは、1時間早寝早起き方向にリズムをずらすことです

リズムを夜更かし朝寝坊方向にずらすことを
   ⇒後退といいます
   ⇒これは、マイナスの数字で表されます
   ⇒例えばマイナス1時間ずらすというのは、1時間夜更かし朝寝坊方向にずらすことです

これがわかったら、次のグラフが理解しやすくなります。このグラフは横軸が時刻です。Sleepと書いてあるところが通常の睡眠時間で午後11時ころから朝7時ころになっていますね。そして、朝6時ころに青い線がプラスの方向(上)に大きくふれています。これは、この時間に光を当てると位相が前進(早寝早起き方向)に移動するということです。




http://sites.duke.edu/everydayscience/

このようなグラフを位相反応曲線といいますが、しかし、睡眠の前半にあたるような時刻に光を浴びると、逆に夜更かし方向に位相が変化してしまうことも示しています。つまり、夜更かしして明るいところにいると、朝起きにくくなるということですね。

睡眠が後退している患者さんには、このような光を用いた治療を行うこともあります。光を当てるタイミングは、もし位相がずれている人であれば、その人の位相に合わせて当てなければならないので、専門的な知識も必要です。

このような光の効果は、青白い光が大きな効果を持っていることもよく知られています。このような光は、コンピュータの画面からも多く発せられているので、寝る前にコンピュータやスマートフォンの画面を見つめるのは、睡眠にはよくありません。最近は、このような青白光をかっとするソフトウェアなども出ています。


2014年5月27日火曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (3) ブラジルビザ

ブラジルからビザが発給されました。実は、私は南半球に行くのはこれが初めてです。ブラジルに行くのにビザが必要なことも知りませんでした。前にも書いたように、ブラジル領事館は午前中しかビザ発給の受付をしていないので、私はUniver Turという南米専門の旅行代理店に頼みました。日系ブラジル人と思われる人たちが多く仕事をしている、なかなか楽しい会社でした。

ブラジルビザがどのようなものか、自分のを出そうとも思ったのですが、いろいろ個人情報もあるので、ネットにあるサンプルを一つ。



ビザの発給について、今回のワールドカップを目的とするビザは比較的スムーズに発給してもらえるようです。私も、数日でパスポートが戻ってきました。実は、来週はアメリカ睡眠学会に参加するために渡米するので、パスポートが必要なのです。ブラジル領事館がパスポートを返してくれなかったら困るなとは思っていましたが、これは大丈夫でした。

さて、南半球に行って確かめてみたいこと2つ。

1.水が流れるときに、渦巻きの北半球と逆
  これは、どうも必ずしも正しくないようで、台風のような大きな現象でなければならないようです。でも、一応観察してみようと思います。

2.太陽が西から上る。
  こんなことがある訳ありませんが、太陽が北側に傾きながら東から登ると、我々は太陽は南側に傾いているものだと思っているので、西から昇るように見えるという話を聞いたことがあります。大学の同僚の教員がそう言っていました。これは、面白うそうです。

2014年5月26日月曜日

ASRS ver. 1.1 再考

注意欠如多動性障害の診断法として、有用であるといわれている質問紙ASRSを用いています。電子カルテを使っているので、6つの項目のテンプレートを作り、それを患者さんに聞きながら採点していくようにしています。この様な方法をとっていくと、患者さんたちの内的な世界を伺い知ることができます。

ふだんの生活の中ではあまり意識しませんが、人はそれぞれ自分自身の内的世界と外界との相互作用の中で生きています。その場合、他の人の主観的な体験がどの様なものかは、直接詳細に聞いて初めて伺い知ることができるように思います。

いわゆる発達障害との診断が可能な人たちも、生来ずっとそれでやってきているために、それが普通だと思っている人も大勢います。もちろんその中で、いわゆる生きにくさを感じている人もいます。しかし個別的な事象になると、それは普通と思うことが以外に多いことに気づきます。ASRSの解説を読むと、「ASRSパートAの診断テストとしての特性評価では、感度68.7%、 特異度99.5%と報告されています。」と書かれています。つまり、ASRSで真のADHD患者さんの三分の一は外れてしまうわけです。そのようなものの意外と多いのは、実際にASRSの項目の症状があるのに、それを無いと答える場合です。

具体的な例をあげましょう。「長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが、どのくらいの頻度でありますか。」という問いに対して、めったにありませんと答えたとします。本人は、めったに無いと思っているわけですが、その時に診察室の中でもそわそわと動いていたりします。このような人は、これが普通でずっとやってきているために、非常に長時間になって、自分でもイライラする時になって、自覚的にそわそわすることがあると認識されるということがあるわけです。そのため、答えはめったにないとなります。

こういう時に、人はみんな主観的な世界の中に生きているんだなぁと思います。しかし、外来に来る患者さんはそうは言っても、困っていることがあって来院するわけですから、問題は感じているわけです。そのような問題を、一般の平均的な部分を基準として、診断し、話し合いながら治療のゴールを考えていくということは、臨床家としての経験が相当必要だなあと思いました。

若い頃は、精神科の医者は経験がなくても知識があればそれなりに治せると思っていたように思います。しかし、今になってみると、やはり経験の中である一定の常識をもち、それに照らし合わせながら治療していくということも、知識と同様に、あるいはそれ以上に大事なことであると感じています。


参考
ASRSの用紙
https://www.adhd.co.jp/doctors_lib/pdf/asrs_checklist.pdf

2014年5月25日日曜日

私が監修したヒーリング・ミュージック (2)

私が監修したヒーリングミュージックの第2弾2タイトルが出ました。





今回も、前回と同様に作曲家、西村真吾さんの作品群です。このタイトルも、監修としては曲想や、コード進行などについての示唆もしました。また、作品のスケッチを聞き、そこに注文をつけたりもしました。このようなやり方は、私のように音楽のプロでない人間がプロの作曲家に注文をつけるということで、やりにくい面もあるかもしれません。しかし、西村さんはしっかりと受け止めて下さり、非常によい作品になっていると思います。

こういった意味で、このCDのシリーズは、実際に私が監修したもので、「名前だけ」ではありません。

この仕事は、私自身の本業の合間に気持ちが癒やす意味もあって、まさにこの仕事自体がヒーリング・ミュージックです。

2014年5月24日土曜日

子育てと睡眠

現在、早稲田大学エクステンションセンターの講義をこの夏休み前の春学期に行っています。前にも書きましたが、これは、一般の人たちを対象に、大学教員などが教養講義をするものです。早稲田大学の、大隈講堂のある早稲田キャンパスの教室を使って行っています。聴講に来られる方々の多くは、リタイアされた60歳以上の方々です。二限目に行っているのですが、一限目の学生対象の講義とはずいぶんと雰囲気が違って、また楽しい講義です。

先日は、睡眠の発達のところで、新生児の睡眠の発達についての講義を行い、新生児は、最初は睡眠覚醒のリズムがなく、次第に25時間位の周期でのフリーランの状態になり、その後17週目くらいから、夜間にまとまって眠るようになるということをか哀切しました。下記の図はそれをしめしたもので、横軸は48時間(二日間)を示してあり、横の一本の線のなかで、黒い部分が睡眠となっています。数本ずつまとまっていますが、ひとつのまとまりは7本で一週間分です。これはダブル・プロットと行って、一本の線の右側の12時間が左側の次の行の12時間と同じものです。


http://www.glimmerveen.nl/le/biological_clock.html

さて、このように赤ちゃんは次第に夜にまとまって眠るようになりますが、それまでの数ヶ月はお母さんは、大変です。それで、家では夫の当直制度を用いたことを思い出して、その話をしました。お母さんは、この時期夜もまとまって眠れず、昼間は家事をしたりで昼間もあまりまとまって眠ることができません。そこで、我が家では一週間に1-2回は私が当直当番として夜中に子供が起きたときには、自分が起きて、ミルクをあげるか、おむつを取り替えるかいずれにしてもそのような役割をして、その日は朝までまとまって妻が眠れるようにしました。これは、非常に感謝されました。

この時期のお母さんは、本当にまとめて眠りたいという気持ちが強いと思います。週に1日でも、今日はまとめて朝まで眠れるということが保証される日があれば、これほどありがたいことはないというほどです。このお話をしましたところ、「すばらしい。」という言葉を、女性の聴講生からいただきました。

まもなく赤ちゃんの生まれる方は、是非お試しください。きっと生涯感謝されることになるでしょう。


2014年5月22日木曜日

フルニトラゼパムは米国では持ち込み禁止薬物

先日、滋賀医科大学睡眠学講座の宮崎総一郎先生とお話をしていて、フルニトラゼパムがアメリカでは持ち込み禁止薬物になっているということを教えていただきました。うかつにも、このことを知らなかったので、少し調べてみました。

フルニトラゼパムは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。商品名は、ロヒプノール、サイレース、あるいはジェネリックはフルニトラゼパムという名前で発売されています。消失半減期は文献によっても様々なのですが、7-20時間と書かれているものが多くあります。『投与後12時間目までの半減期は約7時間』としているものもあります。いずれにしても非常に短いものではないので、翌日へのハングオーバーについては注意しながら使ったほうが良いと思います。一方で、抗不安作用なども併せ持っており、不安の強い患者さんには用いることも良いかもしれません。高齢者には、フラつきなどの副作用に気をつけて、使う必要がある薬剤です。

睡眠感は非常に良くなるので(気持ちよく眠れるようになる)、容易に精神的な依存が形成される印象があります。高齢になると睡眠の質は低下するので、それが普通の睡眠なのですが、フルニトラゼパムを飲んで、気持よく眠れるようになると、どうしてもそれを飲みたくなってしまうということです。長期間、少量のベンゾジアゼピン系睡眠薬を飲み続けること自体に大きな問題はないようにも思います。しかし、できればこのような薬物の投与は、最小限に抑えて、治療目標としてはそのような薬物を使わなくても眠りに対して不満がない状態にすることを目標にしたいと考えています。

さて、このフルニトラゼパムについてですが、商品名のロヒプノール(Rohypnol)として、アメリカ合衆国司法省のホームページにその解説が出ています。

Is Rohypnol illegal in the United States?

Yes, Rohypnol is illegal in the United States. Rohypnol is a Schedule IV substance under the Controlled Substances Act. Schedule IV drugs are considered to have a lower potential for abuse but still can lead to limited physical or psychological dependence. In addition, in 1997 the U. S. Sentencing Commission increased the penalties associated with the possession, trafficking, and distribution of Rohypnol to those of a Schedule I substance. (Schedule I substances include heroin, marijuana, and MDMA.)

上記を見ると、アメリカ合衆国ではフルニトラゼパムは規制物質で、スケジュール IV(濫用の危険性は低い物質)にカテゴリー分類されているようです。しかし、1997年よりこの薬物の所持や転売などについては、スケジュール Iに分類されるヘロイン、マリファナ、MDMAなどの麻薬関連物質と同じような罰則が適用されるようです。

私が臨床的に用いている中には、依存の度合いが激しく非常に問題であると感じている人は、殆ど居ませんが、上記のようなことには充分に注意して、海外に行く際にどうしても必要であれば、英語の診断書をお渡ししたり、他の薬物に変えて処方するなどの配慮も必要になってくる薬物だと強く認識いたしました。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

2014年5月21日水曜日

軽うつと身体症状

昨日は、イーライリリーの主催する、ウェブ講演会で座長をさせていただきました。講演は、村上医院の村上建先生でした。村上先生とは、あべクリニックで診療するようになってから、いろいろな機会にお会いさせて頂いています。江戸川区で開業をされていますが、患者さんを丁寧に診察されるということで、非常に評判の高い先生です。

昨日のお話は、うつ病の患者さんを対象に、重症度による分類を行い、重症度別に、つらいと思われる身体症状と、つらいと思われる痛みがどのように出現しているかをご自身で調査した結果について話されました。ご自身のデータに基づいたお話で、説得力があったと思います。

この中で、私が非常に参考になったのは、このような痛みや身体のつらさに現れる症状は、必ずしも重症になると多くなるというわけではないことです。比較的症状の軽い患者さんでもこのような身体的な症状が非常に多く見られていました。精神科の診療ではこういった身体症状は見逃されがちになるので、軽症の患者さんでも身体症状は頭において話を聞くべきだという思いを新たにしました。

また、このような症状一つ一つを確認することは時間のかかることですが、今回の調査で村上先生が外来で用いた質問紙は、非常に簡便なもので、こういった質問紙を問診の際に用いることも悪くないのではないかと思いました。場合によると、うつだけでなく、その他の疾患においても思った以上に身体症状を持った人が多い可能性もあります。精神科医は、どうしても精神症状に焦点をあてて患者さんの話を聞きがちですが、患者さんの症状全体を捉えて治療するという観点に建てば、精神症状だけを聴いていたのでは片手落ちになってしまいます。

このような身体症状について尋ねる視点は、今後の診療にも活かしていきたいと、私自身も思いました。

2014年5月20日火曜日

アスリートのバーンアウト症候群

バーンアウト症候群について調べたいという学生が来て、相談に乗りました。このバーンアウト症候群という言葉は、スポーツ医学の分野では、非常によく使われます。競技を一生懸命やった末に、ある時、急に意欲が低下してやめてしまうというような場合です。そういう時にスポーツドクターからは、バーンアウト症候群として紹介されることもあります。

このバーンアウト症候群ですが、医学的な診断名ではありません。医学的な診断名は、例えばICD-10(WHOの国際疾患分類)に出ているような名前ですが、バーンアウト症候群も(オーバートレーニング症候群も)、ICD-10のなかには名前がありません。したがって、心療内科などの病院に行っても、バーンアウト症候群が正式な診断名となることはありません。

では、このバーンアウト症候群はどのようなものでしょうか。これは、社会心理学という分野で主には使われる名称で、もともとはヒューマンサービスに関わる人達に使われた言葉です。ヒューマンサービスとは人に対するサービスを行う仕事で、医療職や看護職、あるいは介護職なども含まれます。このような人たちの中に、それまで一生懸命仕事をやりながら、突然燃え尽きたように仕事をやめてしまう人がいるということが知られ、これがバーンアウト症候群と呼ばれるようになったということです。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/01/pdf/054-064.pdf

上記は、この分野の専門家である同志社大学の久保真人先生の論文へのリンクです。久保先生は、この分野の単行本も出版されています。




この本を見ると、このような燃え尽きたように見える人を、バーンアウト症候群とするための要件が三つあるということが書かれています。それらは、

1.情緒的消耗感 (emotional exhaustion)
2.脱人格化 (depersonalization)
3.個人的達成感 (personal accomplishment) の低下

です。これをアスリートの当てはめるとこのようなことになります。

1.俺はやってもやっても、レギュラーになれない。自分なりには相当努力した。しかし、監督も自分を認めてくれないし、時には控えめに考えても自分よりも下の選手が使われたりする。自分はそれでも努力したが、もう疲れた。2.監督は、おまえのポジションは他にも居るという。自分は、チームの為に一生懸命やってきたつもりだが、いつでも他の人に変えられるようなことを言われる。
3.やってもやっても、成功できない。いったい、どれだけ努力したら良いのだろう。

このような状態の中で、もう競技はやめようと思う状態があれば、それはバーンアウト症候群と社会心理学的に定義されることになるでしょう。しかし、多くの場合、スポーツ医学の現場では、嫌になってやめるように見える人たちが、全般的にそう呼ばれることがあるようです。そうは言っても、そういう人たちの中に、バーンアウトに当てはまる人は多くいるとは思います。

バーンアウトの結果として、ときにうつ病(あるいは、適応障害 うつ状態)に陥る人も居ますし、うつ状態にならず、他に自分の道を見つける人もいると思います。その後状態の人に対して、医学的ケアが必要であるとすれば、それはその人が何らかの医学的な意味での診断がなされる状態にある場合です。逆に言えば、バーンアウト症候群と言っても、特に医学的なケアが必要ないケースも有り得ると思います。

比較的多いのは、こういった選手を何とかもう一度競技に戻せないかという相談です。しかし、ここまでくると、なかなか難渋します。しかし、私の経験では、現在の状態を過去の自分のスポーツへの関わりから明らかにしていくプロセスを一緒に行う中で、今までこれだけ努力してやってきたことだから、もう一度頑張ってみようと思う選手が、ある割合居ることもわかりました。そういう選手は、競技に復帰すると再び努力し、多くは活躍するようになっています。

2014年5月19日月曜日

睡眠のトリビア

中外医学社から『睡眠のトリビア』という本が発売されました。編集は、宮崎総一郎先生(滋賀医科大学 睡眠学講座)です。私は、この中の三分の一を担当しました。宮崎先生、林光緒先生(広島大学)と私が編者です。




この本は、睡眠にはこんなことがあるのぉ、という興味深いトピックを取り上げて解説しています。宮崎先生は、もともとは耳鼻科医で睡眠時無呼吸症候群が専門でしたが、今は、睡眠教育に意欲を注いでおられます。林先生は、人間科学、心理学的な立場から睡眠の研究を精力的にやっておられる、研究者です。私は、精神科医です。その他に、睡眠研究者の北浜邦夫先生、田中秀樹先生も執筆されています。それぞれの立場から、幅広いトピックを取り上げて、解説している面白い本です。各単元は比較的コンパクトにまとまっていて、読みやすいと思いますので、是非お買い求めください!

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中外医学社ホームページより

はじめに

 ギリシャ神話のなかで,ヒプノスは眠りの神でした.ヒプノスが語源となって,睡眠薬を英語でhypnotic,催眠術はhypnosisと呼ばれています.そのほか,眠りに関係した神々として,パンタソスやモルフェウスがいました.パンタソスは物体の形で現れ,ややこしい非現実的な夢を生み出す神でした.みなさん,ファンタジーという言葉をご存知ですね.パンタソスはこのFantasyの語源となっています.モルフェウスは,あらゆる人間に変身して夢に現れる神であることから,薬物のモルヒネの語源となっています.我が国では,眠りに関係した仏像といえば法隆寺の「夢違(ゆめたがい)観音」が有名です.この観音は悪い夢を良い夢に読み替えたり,悪い夢を無力化したりできると考えられていました.

 さて,21世紀のいま,睡眠への関心がとても高くなっています.たとえば,良く眠るためのハウツー本,眠りに良い寝具やパジャマ,寝つきの良くなるアロマ,薬局で簡単に買える睡眠薬等,快眠産業は2兆円以上と試算されています.人々がこれほど,睡眠に関心を持ったり悩んだりした時代は,過去にはありませんでした.50年ほど前は,だれも睡眠に関心を払いませんでした.睡眠研究の先達である,東京医科歯科大学名誉教授の井上昌次郎先生は,「どうやら,現代人は史上まれにみる『眠り下手(べた)』になってしまった」とその著書「眠る秘訣」の中で指摘されています.

 『眠り下手』になった理由の一つとして,健康や睡眠にかかわる情報の氾濫があげられています.人の脳の研究が進歩し,睡眠の役割が明らかになるにつれ,脳や健康にとって睡眠がきわめて重要な役割を演じていることが明らかになってきたからです.それまでの常識では,睡眠の評価はごく低いもので,極端な場合には無駄な時間とみなされていました.それが一転して,睡眠は無意味どころか極めて有用であり,高等生物は睡眠なしには生きていけないことがわかってきました.しかし,睡眠の大切さが適切に理解されればよかったのですが,科学的な情報を安易に拡大解釈し,睡眠を思いどおりに操作できるとする,まちがった情報も発信されるようになっています.たとえば,「睡眠は4時間半で十分!」とか,「睡眠時間を短くする方法」といったものです.そういう正しくない眠りに関する情報に,私たちは惑わされています.また逆に,7時間は眠らないと健康を害してしまうと思い込み,不眠に対して過剰なまでの反応をしてしまっている方々も多くおられます.

 この「睡眠のトリビア」企画にあたっては,楽しくわかりやすい形で,睡眠学に関連した知識を提供できるよう,編著者で相談し,「へーっ!?」といった知識から,臨床に役立つ情報まで含めました.この本が,日々の睡眠に思いをはせるきっかけや,睡眠診療や不眠の方の相談のヒントになれば幸いです.

2014年4月 春眠を感じながら
宮崎総一郎
林 光緒
内田 直



目次


第1章 誰かに話したくなる睡眠のトリビア
 Trivia 1.睡眠不足症候群って知っていますか? 〈宮崎総一郎〉
 Trivia 2.睡眠時間が最も長い県はどこ? 〈内田 直〉  
 Trivia 3.寝るときの姿勢に現れるその人の性格 〈田中秀樹〉 
 Trivia 4.眠っている赤ちゃんがにっこり笑うのはなぜ? 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 5.狸寝入りを見分ける方法 〈林 光緒〉  
 Trivia 6.雪山と雪女 〈北浜邦夫〉  
 Trivia 7.半分起きて半分寝ている動物 〈内田 直〉  
 Trivia 8.眠りの多様性─さまざまな生物の睡眠事情 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 9.喧嘩の夢で大暴れ 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 10.脚がむずむずして眠れない……病気でしょうか? 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 11.恋愛にも関係している睡眠ホルモン「メラトニン」 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 12.四季とねぶた祭と睡眠の関係 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 13.露出した脳を観察してわかったこと 〈北浜邦夫〉  
 Trivia 14.レム睡眠と陰茎の勃起 〈北浜邦夫〉  
 Trivia 15.ナルコレプシーとオレキシン,ヒポクレチン 〈北浜邦夫〉  

第2章 夢のトリビア
 Trivia 1.無意識の意識が夢に現れる? 〈内田 直〉
 Trivia 2.ネコは夢をみるか? 〈林 光緒〉  
 Trivia 3.夢をみるのはレム睡眠のときだけ? 〈内田 直〉  
 Trivia 4.UFOはなぜアメリカ人をさらう? 〈林 光緒〉  
 Trivia 5.「夢遊病」の人は夢の中でも歩いている? 〈林 光緒〉  
 Trivia 6.夢の元ネタはいつのもの? 〈内田 直〉  
 Trivia 7.女性の性周期と夢の関係 〈内田 直〉  
 Trivia 8.夢の売り買い 〈宮崎総一郎〉  

第3章 生活習慣と睡眠のトリビア
 Trivia 1.あなたは睡眠不足ではありませんか? 〈内田 直〉 
 Trivia 2.がんになりやすい働き方に注意! 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 3.国際線パイロットや海外サッカー選手の睡眠管理法 〈宮崎総一郎〉  
 Trivia 4.朝型人間と夜型人間の違い 〈林 光緒〉  
 Trivia 5.目覚ましを使わず朝5時に起きられますか? 〈内田 直〉  
 Trivia 6.年をとると睡眠時間が短くなる? 〈内田 直〉
 Trivia 7.お年寄りはなぜ早起きなのか? 〈内田 直〉  
 Trivia 8.授業や講演が眠いわけ 〈林 光緒〉  

第4章 健康な生活のために─食事・運動と睡眠のトリビア─
 Trivia 1.昼寝の前にはコーヒーを飲もう 〈林 光緒〉  
 Trivia 2.「3時のおやつ」に科学的根拠はあるか? 〈林 光緒〉
 Trivia 3.夜中に起きて生肉をむさぼる人びと 〈内田 直〉  
 Trivia 4.「味の素」と睡眠の意外な関係 〈内田 直〉  
 Trivia 5.マラソン選手の睡眠時間 〈内田 直〉  
 Trivia 6.眠ると技術が上達する? 〈内田 直〉  
 Trivia 7.運動が睡眠の質を改善する 〈内田 直〉  

第5章 今夜から実践 トリビアから学ぶ睡眠法
 Trivia 1.眠れないとき,羊を数えるよりも効果的な睡眠法 〈田中秀樹〉  
 Trivia 2.学力を向上させるための睡眠法 〈林 光緒〉  
 Trivia 3.スポーツ能力を向上させるための睡眠法 〈内田 直〉
 Trivia 4.ダイエットに効果的な睡眠法 〈林 光緒〉  
 Trivia 5.熱帯夜に安眠するための睡眠法 〈林 光緒〉  
 Trivia 6.冷え性でも安眠できる睡眠法 〈林 光緒〉  
 Trivia 7.認知症を予防するための睡眠法 〈林 光緒〉  
 Trivia 8.海外旅行をより楽しむための睡眠法 〈内田 直〉  

索引  180




2014年5月18日日曜日

同僚 早稲田大学 広瀬統一准教授 世界一受けたい授業へ出演

昨日、家でテレビを見ていたら、同僚が出演していました。出演していたのは、准教授の広瀬統一(ひろせのりかず)先生で、彼はなでしこジャパンのフィジカルトレーナーもしています。彼とは、サッカーの試合を一緒に見に行ったり、いろいろと親しく付き合って居ます。そのような縁から、以前なでしこがワールドカップで優勝した際のヨーロッパ遠征の前の合宿で、時差調節のアドバイスをしたりしたこともありました。今回は、『世界一受けたい授業』という番組へのスタジオ出演です。かなり長時間にわたって、三時間目の保健体育を担当していました。

http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/140517/03.html





こういうことは、よくあります。学術院長の友添秀則教授は、ドーピングの専門家で、先日はクローズアップ現代に出演し、国谷さんのインタビューを受けていました。身体の動きを解析するバイオメカニクスが専門の川上康雄教授も、よくテレビに出演しておられます。

こういうテレビ出演は、私も以前にはキャノンが提供する科学番組『奇跡に地球物語』や、NHKの『アインシュタインの眼』などを担当したことがあります。番組を見たので、広瀬先生にメールしてみましたが、バラエティー番組で情報を提供することの難しさを勉強しましたと返事が来ました。私が見たところでは、とても上手に有用な情報を提供していたと思うのですが、彼の目から見れば、体幹トレーニングの重要な点を伝えきれていなかったことがあるのかもしれません。私自身も、このような番組の中で、詳細な部分を伝えることが十分できなかったなと思うことはありました。

しかし、こういう番組の利点は、すくなくともそういった分野があることを多くの人達が知り、そこを入り口として更に次のステップの知識を得る人が居たり、あるいは番組で伝えられた知識だけでもその部分の知識を生活に活かしたりするということのきっかけになるということだと思います。それだけでも、何もしないよりも大きな利点がると思います。

番組によっては、まったくこちらのアドバイスには耳を貸さず、面白おかしくやるだけの番組もあり、そこらへんの選択は大事かもしれません。以前、ある番組から依頼があった時に、それは断ったのですが、学生が、「先生があの番組にでていたら、ちょっとがっかりするよねぇ。」などと話していたのを聞いて、あまり商業主義に流れるのはいけないなと自重の念を新たにした覚えもあります。


2014年5月17日土曜日

別府での講演

昨日は、滋賀医大で講義をしたあと、別府に移動して夕方、製薬会社であるMSDの主催の講演会でお話をしました。スポーツ・身体運動と睡眠ということでお話をしたのですが、多くの先生方にいらして頂いて、大変嬉しく思いました。

別府は私は、若い頃から馴染みのある街です。別府にある、山本病院という精神科の病院に、研修医の頃は、夏休みにおじゃまし、下記のアルバイトをさせて頂だきました。当直のない日などは、院長先生が街に連れて行ってくれて、飲み歩いたりということで、いろいろと良くしていただきました。大陸ラーメンというお店があって、最後はそこで食べたような気がします。検索すると、まだありますね。

http://tabelog.com/oita/A4402/A440202/44003958/

講演は、睡眠全般についてのお話をしました。サーカディアンリズムと睡眠、加齢による睡眠の変化、運動が睡眠に及ぼす影響、睡眠薬の使い方などです。この中では、睡眠時間が運動選手のパフォーマンスに及ぼす影響というところが、面白かったという声もいただきました。これは、私がよく話をする、Cheri Mah先生(スタンフォード大学)の研究ですが、長時間睡眠をさせたところ、日中のさまざまなスポーツパフォーマンスが改善したというものです。

会の後、久しぶりに、鶴見大病院の山本紘世先生、山本病院の山本隆正先生、中央町こころのクリニックの櫻井政人先生と食事をしました。短時間でしたが、別府温泉にもつかることができ、とてもリフレッシュすることができました。

2014年5月16日金曜日

滋賀医科大学睡眠学講座の講義

私は、滋賀医科大学の出身です。そういうこともあって、滋賀医科大学睡眠学講座の宮崎総一郎教授は、毎年私に睡眠に関連した講義をさせてくれます。私にとってみれば、毎年一度母校に帰ることができるので、とても貴重な機会です。



滋賀医科大学は私が3期生ですから、昭和51年(1976年)に第1期生を迎えたのだと思います。その頃は、新設医科大学ということでしたが、もう今では新設ではなくなり校舎も決して新しくはなくなってしまいました。私が学生の頃と違うのは、なんといっても樹木が大きくなったことです。私が学生だった頃は、まだ新しく出来た公園というか、新築の家に植えた庭木というか、そういうような感じででしたが、今では大学の周りに植わっている樹木もうっそうとして、大学のグランドを外から見ることもできません。それでも、自分が勉強した学び舎はそのままで、構内をちょっとあるいていても、遅刻しそうになって慌てて自転車をとめた自転車置き場などに出くわすと、その時の気持が盛り上がってくるような気がします。

大学時代というのは、本当に青春時代ですから大学時代6年間を過ごしたこの地は、バスに乗って駅から大学に向かうだけでもいろいろな記憶が錯綜します。私は、大学時代はバスケット部には入っていましたが、これよりも音楽のバンドの活動をやっていました。授業もどちらかと言えばさぼりがちで、あまり優等生ではなかったように思います。今でも、音楽はすきで、このブログとはべつに、ジャズのブログも、ほそぼそとですが、やっています (jazz.uchidaclinic.net)。

講義は、睡眠学講座の一度だけの講義でしたが、運動やスポーツと睡眠との関係についてのお話をしました。大学の講義でなくても、スポーツの話は多くの人が興味を持っており、今回もスポーツの話はしましたが、主にはこれを題材にして、人の生活の中での睡眠の重要性についてお話をしました。後輩たちも、まじめに聞いてくれて、とても嬉しいひとときでした。

もう一つの発見は、環びわ湖大学・地域コンソーシアム という組織があって、この地域の大学の学生が、滋賀医科大学に聴講に来ていることです。本日の講義にも、立命館大学の学生さんがいて、特にアメフト部の学生なども居て、私はとても嬉しく思いました。

2014年5月15日木曜日

グリシン (グリナ 味の素)

睡眠を改善するサプリメントは多くありますが、日本で発見された物質は珍しいと思います。グリシンはその一つで、発見者は味の素の社員です。発見のエピソードは、ある物質の研究をしている最中に、その物質のプラセボ(偽の作用のない薬)としてグリシンを服用していたところ、いびきをかかず、睡眠が安定しているのを奥さんが気づいたという事でした。したがって、発見者は、社員というよりも奥様のほうかもしれません。その後の研究で、特に動物実験で多くの睡眠に対する効果が確認されています。

私はその中で特に、睡眠中の体温低下効果に注目しています。睡眠中は、体温が低下することは知られていますが、この体温低下は徐波睡眠(深いノンレム睡眠)の出現と関連あるという研究結果が出ています。したがって、体温を低下させる物質は、徐波睡眠の出現を促進させ、睡眠の質を改善させるという考え方も出てくるわけです。

我々の研究では、高強度の運動を夜間の時間帯にした場合に、いったん正常値に戻った体温が、睡眠の前半で高くなる結果を得ています。夜間高強度の運動をした場合、その後の睡眠が安定しないケースが、ナイトゲームの後のアスリートを含めて知られていますが、こういったケースにはグリシンが、特に効果がある可能性もあります。

味の素は、ナショナルトレーニングセンターにもスポンサーとなり、日本のスポーツをサポートしています。私も睡眠を通じて何らかのコラボレーションができると面白いと思っています。

2014年5月14日水曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (1)

私は、ワールドカップの観戦をしに行きます。第二試合ナタルのギリシャ戦です。一つの試合を見に行くために、一週間の日程を使うことになります。昨日は、ブラジルのビザを取るために、旅行社に行ってきました。ブラジルビザは午前中にブラジル領事館に行かなくてはならず、これが不可能なので旅行社に頼むことにしました。私が行った旅行社は、Univer Turという新橋の会社です。南米専門らしく、日系ブラジル人と思われる女性が対応してくれました。それだけで、なんといいますか、盛り上がる感じがありました。

ワールドカップ観戦に行く方は多くいると思いますが、ブラジルはなんといっても遠いですね。飛行機で行くにしても、一週間休んで現地に三泊だけです。しかし、ナタルはとても素敵なビーチリゾートらしく、これは充分に楽しんでこようと思っています。リオデジャネイロでも、トランジットの待ち時間が非常に長いので、できればコルコバードの丘など、見てこられると良いと思っています。

FIFAワールドカップブラジル大会については、何度かに分けてレポートします。

2014年5月13日火曜日

「あとはネルだけ!」になると、もったい無くて眠りたくない

どうも夜更かしになってしまう人が居ます。夜型か朝型かは、体内時計の固有の周期(体内時計の一日の長さ)が長ければ夜型、短ければ朝型になる傾向にあるということを前に書いたことがあると思います。しかし、臨床をみていると必ずしもそればかりではないようにも思っています。

患者さんの中には、あるいは、患者さんでなくても、夜寝る前になると、一日のいろいろなことは終わって、あとは自分の好きなことだけをやれば良いという時間になると、この時間が終わってしまうのがもったいないので、つい眠るのがもったいないと、眠りにつく時刻が遅くなってしまう人が居ます。じつは、私自身もそういうところがあるのです。私の妻はそうでなく、寝る時間になれば寝る、というタイプです。私が、なにかコチャコチャやっているのをみて、呆れていることもあります。

このような心性は、
・ 他人のスケージュールに合わせながらやるのが苦手。一人でやるほうが楽。
・ 一つのことをやり始めると没頭してしまってやめられない。
ということにも繋がるところもあると思います。

これだけでは、そういうタイプの人は大勢居ますので、なんとも言えませんが、注意欠如障害の傾向のある患者さんにも多くこういったタイプは見られるように感じています。このような傾向があると、つい夜更かしになり、朝起きにくい。睡眠時間は短縮されますので、日中の眠気が出るということもあります。

注意欠如障害などの発達障害に関しては、これをいわゆる「疾患」と扱うのは、私自身抵抗もあります。しかし、投薬によって生活がずいぶん改善する患者さんも居ます。したがって、やはり「治療」の対象にはなると思いますが、たとえば、ここに挙げたような睡眠のとり方についての細かい点を問診でお聞きして、ご自身の傾向を指摘しながら、早寝の習慣を指導すると、これだけでずいぶんと日中の眠気がとれ、それにともなって注意力も向上する面もあります。

患者さんの生活の細かい面を知るには、ひとつの方法として睡眠日誌は非常に有効です。私は、睡眠日誌をしばしば患者さんにつけてもらいます。このような患者さんにもまずは、実験的に2週間ほど早寝をしてくださいとお話します。寝る前の楽しい時間を諦めるのは辛いことですが、まずは2週間ほどということになれば、やってくれる人は大勢います。そして、実際にやってみて、日中の眠気が取れることを経験すると、これらを秤にかけて、自分でも早寝しようという気持ちになります。その時に、睡眠日誌で確認する人がいるということも、この実験を行う上でとても助けになることでもあります。

このような診療は、薬物療法だけなく、患者さんの生活の様々な特徴を知って、それを指導するといういうことの重要性を示しているように思います。

寝る前のゆっくりした時間。大切な面もあると思います。眠りにつく時刻も考えながら、過ごせば、良いリラックスタイムになることも間違いないと思います。私も、それを実感して、やはり寝る前には少しゆっくりしてから眠ることが多いわけです。

2014年5月12日月曜日

Mystery of Sleep (2)

4月から行っている、早稲田大学早稲田キャンパス14号館での英語講義「Mystery of Sleep」も明日な5回目を迎えて、もう3分の1が終わったのかと思うと、時の経つのは早いものだと思います。前回も書いたとおりに、一応順調に講義は進んでいますが、グローバルエディケーションセンターの講義ですので、全学の学生が対象になります。一番多いのは、英語講義なので国際教養学部の学生ですが、政治経済学部や商学部、理工学部などの学生も居ます。最終的には57名の学生が登録して、かなり盛況な講義となりました。

先週は、睡眠の生理学として、睡眠にかかわる脳内のメカニズムについて話しましたが、こういう話をわかりやすくするのはとても苦労します。得意英語で話をするのは、術語もしっかりと覚えながら、脳科学や神経科学の知識のない人に話をするので、定義からやさしく話していくのは難しいです。

基本的には、エコノモ脳炎の研究に始まるこの分野の黎明期の話から入って、

脳幹部 ⇒ 覚醒のメカニズム
視床下部前部 ⇒ NREM睡眠導入のメカニズム

というわかりやすい図式にして、細かいところは捨象しながら、この2つがいろいろな物質と絡んで働いているという話をします。この単元は一回の割り当てにはしましたが、毎年一回では終わらず翌週までやり残しが出てしまいます。しかし、こういうことを教えるということをすると、自分も非常に理解が進みます。このような中で、オレキシンの役割などについてもずいぶんと理解が進んだ気がします。

2014年5月11日日曜日

睡眠総合ケアクリニック代々木 10周年記念パーティー

昨日は帝国ホテル孔雀の間で、睡眠総合ケアクリニック代々木の10周年記念パーティーが行われました。このクリニックは、もともとは、晴和病院に当時おられた、私も指導を頂いた本多裕先生(故人)が開設されたクリニックで、開設当初より本多先生に協力して診療をされていた、井上雄一先生が、その後理事長となって、更に大きく拡大されたクリニックです。日本における、睡眠障害専門外来を行うクリニックとしては最も大きなもので、私も一度見学をさせていただいたことがありますが、PSGを行う部屋もたくさんあり、多くの患者さんが外来に見えていました。今回10周年記念ということで、10年一昔といいますが、もう10年経ったのかと思います。

このような、睡眠専門外来は次第に増えては居ますが、このなかの多くは睡眠時無呼吸症候群を専門に取り扱う睡眠専門外来で、その他の睡眠障害、たとえば、不眠症、ナルコレプシー、ムズムズ脚症候群、概日リズム睡眠障害などは、取り扱っていません。このような、広範囲の睡眠障害の患者さんを受け入れられるクリニックはあまり多くなく、睡眠総合ケアクリニック代々木は、そういう意味でまさに総合ケアクリニックだと思います。

規模は小さいですが、私が勤務しているあべクリニックの睡眠専門外来もある意味では、睡眠総合ケアクリニックだと思います。睡眠時無呼吸症候群から、不眠症や様々な睡眠障害の患者さんが見えています。更に、以前にも書きましたがあべクリニックは、精神科・心療内科一般の診療をしているために、例えば日中の眠気で訪れた方の背景に、ADHDの存在を診断し、こちらのケアを行うということもスムーズにできているという利点もあります。ADHDに睡眠障害が多いことについては、昨日の会でも、昭和大学付属烏山病院病院長の加藤進昌先生が、ご挨拶の中で話されていました。

昨日の会は、関東地区を主体に、睡眠に関連した様々な先生方が集まっておられましたが、私は個人的には、日本大学医学部精神科の内山真教授と久しぶりにゆっくりとお話出来たのが、大きな収穫でした。

2014年5月10日土曜日

メンタルヘルス運動指導士

私は、日本スポーツ精神医学会の理事長をしています。日本スポーツ精神医学会は、今年12回めの学術集会を行う比較的若い学会です。会員はまだ200名くらいですが、現在注目されている活動の一つに、メンタルヘルス運動指導士資格があります。今年5年目を迎えるこの資格は、当初は、精神科病院において、患者さんに運動指導をする人たちが、資格として持っているものがないという声から、精神科運動指導に慣れた人たちに何らかの資格を与えたいという思いから作られました。

資格をとるためには、一定期間以上、精神科運動指導の経験が必要です。また、医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などの資格を持った人は、この基準が比較的緩やかになるようになっています。現在5年経過したところで、基準や運用を見なおしています。

さて、この資格は、当初は精神科病院での運動指導をしている人たちを対象にしてきていますが、最近は、うつ病に対する運動療法指導についても、対象となる可能性が大きくなっています。最近は、リワークの場などでも、メンタルヘルス運動指導士の資格をとる人たちが次第に増えてきています。現在の改訂作業の中でも、この分野を視野に入れた改訂が行われています。


昨年の講習会および学会ホームページへのリンクは以下のとおりです。

メンタルヘルス運動指導士資格講習会

2014年5月9日金曜日

時計描画試験

時計描画試験は、認知症のスクリーニングに良いというので、最近興味を持っています。私自身は、これまでさほど使ったことはありません。空間認知に関わる試験とされていたが、最近は認知症のスクリーニングとしても使われています。外来では、しかし、多くは長谷川式の認知症スケールや、MMSEという長谷川式に似た認知症スケールを用いることが多く、これもさほど大変な検査でもありませんので、使うことは多くはありませんでした。

しかし、時計描画試験は、書いた時計の絵が残っていくので、ひと目でその変化がわかるという良い利点もあるように思いました。

Wikipediaからの引用で恐縮ですが、教示は: 「A4サイズの紙を被験者の前におき、「この紙の上に、紙の大きさに見合った大きさの丸時計の絵を描いて下さい。数字も全部書いて10時10分になるように描いて下さい」と口頭で指示する。」ということです。紙は白い紙があれば良いので、決められた指示をすれば、その結果がわかります。短時間で評価もできます。

評価の仕方も、標準化されていて、Freedmanという人がWikipediaに出ています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E8%A8%88%E6%8F%8F%E7%94%BB%E8%A9%A6%E9%A8%93

また、尾道市医師会のHPには、少し異なった試験方法のマニュアルもあります。
http://www.onomichi-med.or.jp/oioi/24-1.pdf

アイオワ大学のホームページに、書かれているものが割りとシンプルそうで、良さそうなので、用紙もダウンロード出来ますし、これを日本語に直して使ってみようかと思っています。
https://www.healthcare.uiowa.edu/igec/tools/cognitive/clockDrawing.pdf

末尾の文献に示した、Shulmanの論文によれば、この時計描画試験は充分にMMSEなどの試験と同等の、診断的な評価ができる試験であるという結果を示しています。最初にも書いたとおり、時計の形が残っていくので、MMSEと同時にやってみようと思っています。


【文献】
Kenneth I Shulman.  Clock-drawing: is it the ideal cognitive screening test?  International Journal of Geriatric Psychiatry  Volume 15, Issue 6, pages 548–561, June 2000

2014年5月8日木曜日

アスリートの時差対策 (6)

(5からの続き)成田空港で飛行機に乗る時の注意

ここで、飛行機に乗る際に、実際に竹澤選手に指示したことですが、東向きのカリフォルニア便は通常夕方便で、現地には午前中に到着します。その後、夜までずっと起きていることになるので、なるべく飛行機の中では眠るようにしたほうが良いので、そのように指示しました。また、このためには、搭乗前に食事をとってしまって、機内ではなるべく眠るほうが良いわけです。その他に飛行機に乗る前には、時計を現地時間に合わせる。時計を合わせることは、外的因子として、体内時計に 影響を与えることになるので、これも指示しました。機内では水分を多めにとる。アルコールやコーヒーは控えることも話しました。飛行機の中は乾燥しているので、水分を補給したほうが良いし、時差とは直接関係はありませんが静脈血栓などの発生を予防する効果もあります。

この指示は、出発の何日か前に話したのですが、彼はしっかりとそれを覚えていて、食事を予め取り、時計をしっかりとカリフォルニア時刻に合わせていました。このようなトップアスリートに接すると、伸びるアスリートの要件として、貪欲に情報を吸収し、自分で考えて、納得したことはしっかりと事項するという行動力が、ずば抜けて高いと感じます。トップアスリートには若くても尊敬できる人が多く居ます。

さて、無事カリフォルニアに到着し、翌日の朝の集合に私も参加したのですが、竹澤選手は、非常にスッキリした顔をしており、すごく良く眠れたと話していました。一方で、同行した別の選手は、寝付きが悪く夜中に何度も起きてしまったと話していました。その後、竹澤選手と一緒にしばらくジョギングもさせてもらいましたが、彼は体調も良い。日本で朝走るのと同じ感覚ととても嬉しそうでした。このような状態で、数日後に試合に参加し、良い結果を出したわけです。


競技の会場でトレーニングする竹澤選手


実際に選手に同行してみると、このような時差対策は、時差を克服するだけでなく、体調が良い状態で現地入りした時の安心感という、メンタルな側面も大きくあるように思いました。現地入りしたあと、体調の良い状態で、試合に向けてのコンディショニングができるようになると、現地での滞在時間が非常に有効に使えます。

私は、大学の講義などがあり試合は観戦できませんでしたが、彼は試合で当時の学生新記録を樹立したわけです。この時差対策は、私にとってもとても大きな経験になりました。

2014年5月7日水曜日

公共スポーツ施設の利用

連休中、妻とテニスをしました。近所でテニスをすることは、実はあまりありません。早稲田大学所沢キャンパスのテニスコートを使ったことはありますが、遠いので頻繁にという訳にはいきません。市のテニスコートが、インターネットで予約できることを知ったのは、1-2年前でしたががそのまま放っておきました。先日、妻が連休にテニスをしようということを言ったので、そのことを思い出して予約サービスに登録して連休の空きコートを検索してみました。このような検索もできるので、公的なインターネットサービスも充実してきたものです。日程を区切って、検索をかけると市内の空いているコートがわかるという仕組みです。連休中はさすがにいっぱいでしたが、それでも何とか見つけることが出来ました。

あとは、当日行ってテニスをするだけです。2時間で420円というなんとも安い料金で、良いテニスコートが使えます。このような公的機関は、手続きが面倒でなかなか使いにくいと思っていましたが、全くそのようなことがないのでとても満足です。

テニスというと、アメリカでテニスをしたことを思い出します。私は1990年から1992年にカリフォルニア州のサンフランシスコ近くに住んでいましたが、テニスをしようと思えば、近くの公園のテニスコートが自由に使えましたし、比較的空いていました。使う時間は、たしか1時間以上使っていて、次の人が来たら20分位で次の人に渡してくださいというようなゆるいルールだったと思います。また、高校のテニスコートも使っていない時は地域にオープンで、同じようなルールで勝手に使えた覚えがあります。日曜日など、好きなときに行くと、だいたい空いていたので、好きなだけやって帰るということで料金も無料でした。

帰国した時は、このような公共施設の利用法はアメリカは相当進んでいるなぁとも思ったのですが、今回市のテニスコートを使ってみて、とても手軽に使えたので、あまり変わりない気がしました。すでに、このような施設は多くの人が使っているのでしょうが、できれば今後は、これまで運動していない人が気軽に使えるので良いと思って使用するようになると良いと思います。運動が、身体的だけでなく、精神的にも健康度を改善させることはここでも強調してきていることですが、すでにやっている人でなく、これまでにやっていなかった人が運動するようになるということも、重要なわけです。すでに使っている人にとって見れば、より混んでしまうという面もありますが、ニーズが多ければ市はもっと施設を拡充すれば良いと思います。そのような中で、住民の健康度が増して、暮らしやすい生産性の高い街なるということは、市にとっても利益になるでしょう。

このような公共の施設を使って、スポーツが更に盛んになっていくと良いと思っています。

2014年5月6日火曜日

JA全農2014年世界卓球団体選手権東京大会 (2)

昨日、卓球団体世界選手権が終わって、男子は銅、女子は銀メダルでした。金は、男女とも中国で、卓球の中国の強さを思い知った気がします。私は、卓球のことはほとんど知りませんが、今回は試合を見に行ったこともあって、結果に非常に興味がありました。特に、女子の元代表監督である近藤先生からの招待だったので、女子が決勝に残った時は期待しました。結果は、0-3でしたが、内容としては大きな進歩があったということでした。

今回の試合には、福原選手は怪我でメンバーに選ばれていませんでした。福原さんは、以前早稲田大学に所属していたこともあって、私は応援したいと思います。なかなか卓球との両立は難しかったと思いますが、もし引退されてまた勉強する時間があれば、大学に戻られるのも悪くないように思います。アスリートで大学生活を送っていくのは、確かに大変なことです。特にラケットゲームなどで、遠征して試合をこなし、ポイントを稼ぐゲームでは、授業との両立は難しい面があります。スケートの中野友加里さんは、早稲田大学のeスクールを卒業されていますが、このようなインターネットを使った教育制度は、アスリートに向いているかもしれません。しかし、私は選手生活を送られたあとに大学生活を送るのも悪く無いと思っています。特に、学部にこういった社会人入学生が入ってくることは、高校から来た若い学生に対して、とてもよい効果があります。社会人入学生は、学ぶ目的をしっかり持っているので、その姿をみて、大学で学ぶことを、若い学生が学ぶことができるからです。

さて、卓球は中国が圧倒的に強く、日本も上位です。こう見ると東洋人が多いように思います。オーストラリアとの大戦でも、選手の一人は東洋系の方でした。この理由はわかりませんが、なぜブラジル人はサッカーが上手なのかという疑問と同じようなことのように思います。東洋人の体型の優位性は、無いようにも思います。

石川佳純選手が、次のオリンピオックを目指して更に上位、つまり優勝を狙うという言葉は、本当に力強く感じました。

2014年5月5日月曜日

アスリートの時差対策 (5)

竹澤健介選手に行ったカリフォルニアへの時差対策の続きについて述べましょう。カリフォルニアへは、早寝早起き方向へ睡眠時間帯をずらして行くことがジェットラグ症候群(時差ボケ)を軽減させることにつながります。実際に体の中で起きている変化は、睡眠時間帯の移動に合わせて、体温リズムが早い時間にずれる、コルチゾールの分泌時間が早い時間にずれる、メラトニンの分泌時間が早い方向にずれるなど、体全体のハーモニーとして動いている24時間のリズムが早い時間帯にずれていくということを示しています。一日だけ早寝早起きしてもこのような変化は限られたものなので、より効果的な変化を起こさせるために、光療法とメラトニン療法を竹澤選手には用いました。メラトニンは禁止薬物ではありませんので、服用に問題はありません。また、メラトニンは服用後若干眠気が出るので、短期的には競技力は低下すると思います。

睡眠時間帯は、毎日一時間ずつずらして行きました。したがって、3日間で3時間ずらすという計算になります。もともと早起きだったので、5時あるいは6時には起床する生活をしていました。そこで、6時から、5時、4時、3時という風に起きる時間を前進させ、起床直後に高照度光を浴びてもらいました。またメラトニンは17時、16時、15時というふうに夕方に0.5mgを服用してもらいました。この、毎日1時間ずつ前進させる方法は、やや無理があった気がします。

実際にやってみると、このような時差対策は、競技者や競技団体が時差対策に協力的でないと完全に行うことは難しい面があることも分かりました。例えば、竹澤選手はこの時には学生だったので、実習などもあり早い時間に眠ることが難しい日もありました。更に、メラトニンの即時効果としての眠気が0.5mgという微量でも意外に強く眠いと言っていました。そのようなことから、出発前は調子が悪いと言っていました。これを聞いて私は非常に心配になりました。オリンピックを目指している選手に対して、時差対策といえども、眠気というマイナスの要素を起こさせることが果たして良い結果に繋がるのかに、やや不安が起こったわけです。


パロアルトで滞在した宿舎前での竹澤選手


そこで、私もカリフォルニアについていくことにしました。競技会のあるパロアルトは、私が以前住んでいたサンフランシスコ・ベイエリアにあり、私も非常に良く知っている地域です。パロアルトに、留学時代の友人もいます。
(つづく)


2014年5月4日日曜日

アスリートの時差対策 (4)

(4)では、私が時差対策を行って非常にうまく言ったオリンピックアスリートのケースについて述べましょう。

アスリートの時差対策は、オリンピックやワールドカップなどの大きな試合の前は、あまり必要がない場合もあります。特にオリンピックの前などは、国がサポートをし前もって現地入りしますので、時差の調節には充分時間があるからです。しかし、それでも試合前の重要な時間を一部時差調節に使って、効率的な練習ができないとすれば、やはりそれでも時差調節をしたほうが良いとは思います。

必要となるのは、大きな大会の予選の国際試合です。個人競技選手であれば、様々な記録会やここの予選会に出場し、記録を伸ばしたりポイントを上げていく必要があるでしょう。しかし、同時にアマチュア競技者であれば、仕事や学業もしなくてはなりませんし、プロであれば他の試合もこなしながら予選会に出て行かなくてはなりません。このような時こそ、時差対策がほんとうの意味で生きてくるわけです。

私は、当時私の学生であった、北京オリンピック陸上5000m、10000mに出場した竹澤健介君の時差対策に協力したことがあります。彼は早稲田大学の競走部に所属をしていて、私のゼミに参加していました。真面目な学生で、指導者のアドバイスが納得できれば、そのとおりにトレーニングをするタイプのアスリートだと思います。彼のようなレベルになると、効果の上がらないトレーニング指導に従ってやるということは無いでしょう。例えば少しやったとしても、効果が上がらないと判断されれば、自分でトレーニングを始めると思います。

この頃、アスリートの時差対策については私自身も十分な経験は無かったので、彼のようなレベルの選手が、誤った時差対策によって、オリンピック出場機会を逃してはいけないと思い、彼へのアドバイスについて、私は非常に真剣でした。

彼に行った時差対策の試合は、カリフォルニア州パロアルト市にある、スタンフォード大学が行う招待試合、Cardinal Invitationalです。記録を見直すと、2007年4月30日のことでした。結果として、彼は学生記録を更新する自己ベストを出し、この記録が評価されて北京オリンピックに参加する結果となったのです。

http://www.runnerspace.com/eprofile.php?event_id=95&do=news&news_id=25329

Event 21 Men 10000 Meter Run Kim McDonald
================================================================
Meet Record: % 28:16.60 1998 Brad Hauser, Stanford Name Year School Finals
================================================================
1 Galen Rupp U Oregon 27:33.48%
2 Galvan David Mexico 27:33.96%
3 Simon Ndirangu New Balance 27:38.56%
4 Alistair Cragg adidas 27:39.55%
5 Jorge Torres Reebok 27:42.91%
6 Ed Moran Nike 27:43.13%
7 James Carney Unattached 27:43.64%
8 Suarez Alejandro Mexico 27:43.92%

9 Takezawa Kensuke Unattached 27:45.59%

10 Michael Aish Nike 27:46.37%
11 Josphat Boit Unattached 27:47.57%
12 Alan Culpepper Nike 27:50.05%
13 Simon Biaru Nike 27:50.71%
14 Josh Rohatinsky Unattached 27:55.86%
15 Reid Coolsaet Canada/Reebok 27:56.92%
16 Seth Summerside Unattached 28:02.51%
17 Ryan Shay Saucony 28:03.44%
18 Kenji Noguchi Shikoku Denr 28:03.83%
19 Tim Nelson Wisconsin 28:04.46%
20 Richard Kiplagat New Balance 28:06.43%
21 Romero JuanCarlos Mexico 28:10.14%
22 Dan Browne Nike 28:10.73%
23 Terukazu Omori Shikoku Denr 28:17.97
24 Martin Fagan Unattached 28:18.30
25 Josh McDougal Liberty Univ 28:27.65
26 Ed Torres Reebok 28:28.10
27 Rod Koborsi Reebok 28:30.03
28 Ryan Kirkpatrick Reebok 28:36.12
29 Mark Kenneally Ireland 28:55.49
30 Andrew Letherby Asics 29:04.97
31 Olmedo Pablo Mexico 29:36.89
32 Mario Macias Unattached 29:42.23 

2014年5月3日土曜日

アスリートの時差対策 (3)

(2)では、時差対策の概要を述べました。これは、出発の数日前から睡眠時間帯をずらしていく方法です。もう少し詳しくずらし方について述べましょう。

東向き飛行の場合
東向き飛行とは、日本から東に向かって飛行する場合で、例えばアメリカの西海岸に行く場合です。これは、(2)でも述べたように、早寝早起きにだんだんしていくことが良いわけです。この場合は、いきなり早寝早起きにするよりも無理の無い範囲で少しずつ早寝早起きにしていくほうが体に無理がかからず効果的です。だいたい3時間位早めれば良いと思いますので、例えば30分ずつ早寝にしていくとすれば6日間かけて3時間ずらすということです。どうしても日程が足りなければ1時間ずつずらして3日でやっても良いと思います。しかし、あまり急速にずらすと、早寝しようと思っても眠れなくなり、うまくずらせない可能性もあります。

このような場合に、生体リズムのシフトを促進させる方法を追加して使うことが推奨されます。
これらは、
1.高照度光への暴露
2.メラトニンの服用
の2つです。

高照度光は、以前にも説明した高照度光の治療装置で個人向けのものが発売されています。そういったものの前で、30分から1時間光を浴びるものです。光を浴びる時刻は、起床直後で良いと思います。現実的に、この時間帯に各選手が個別に光を浴びることが効率的でないこともあります。そこで、たとえば、起床後すぐにミーティングを行うなどの工夫も良いかもしれません。ミーティングの部屋をものすごく明るくするわけです。その中で1時間ほどの時間を過ごします。また朝食時間なども連動させて早めていったほうが良いと思います。

メラトニンは、夕方の時刻に服用します。通常睡眠の6時間くらい前に服用するのが良いとされています。また、服用量はごく少量が良いと言われており、私は多くの場合0.5mgで試しています。メラトニンは、日本では発売されていませんので、並行輸入で購入することになります。


上記は、Amazonへのリンクですが、Natrol社のものを使っている人が多いようです。

西向き飛行の場合

西向き飛行は、ヨーロッパなどに行く場合ですが、これは夜更かし朝寝坊の方向に睡眠時間帯をずらしていきます。これも30分位ずつずらして行くのが良いと思います。以前にも述べたように西向き飛行のほうが現地において適応しやすいということがあります。これは、早寝早起きにシフトさせるより、夜更かし朝寝坊にシフトするほうが、楽だということと関連しています。ヨーロッパに行くと極端に夜更かし朝寝坊が普通の生活になるので、合わせやすいわけです。

ここで、光を使うとすれば夜の遅い時間帯に強い光を浴びます。ミーティングを夜やって、その時に明るい部屋でやるとよいでしょう。また、メラトニンを飲むタイミングは朝になります。しかし、西向き飛行の場合は、先に述べたように適応はし易いので、光だけで充分ではないかとも思います。

(4)では、私が時差対策を行って非常にうまく言ったオリンピックアスリートのケースについて述べましょう。

2014年5月2日金曜日

JA全農2014年世界卓球団体選手権東京大会 (1)

私は、早稲田大学で「スポーツカウンセリング」という講義をやっています。秋学期の講義で、15回の中で、臨床心理学に関連したカウンセリングの基礎から、アスリートに対してのカウンセリングの応用までの話を学生にします。この講義に、昨年、2008年北京オリンピックの女子卓球監督、近藤欣司先生が聴講を希望されました。私としては、非常に緊張感が会ったのですが、とても丁寧な方で、卓球関連の仕事がない限り、私よりも早く教場にきておられ全出席をされました。最後の一回では、学生向けに北京オリンピックでの監督としてのご苦労について、早稲田大学の学生にお話もいただき、私としてはむしろこちらが勉強させていただいた思いです。このような御縁があって、今回の世界選手権のチケットを頂き、昨日代々木第1体育館に行ってきました。

行ってみるとアリーナ席で、本当に間近に選手の様子が見えました。私が北京の時から大ファンである、平野早矢香選手も出場し、大感激いたしました(写真)。


卓球は、メンタルなスポーツだということは知っていましたし、近藤先生からもいろいろとお話を伺っていたのですが、このような試合に行ったのは初めてだったので、いろいろと勉強になりました。近藤先生は、選手がタイムアウトの時に監督からどのように声をかけてもらいたいかを聴いたそうです。そうしたところ、ガンバレなどということは言ってもらいたくないということでした。では、何を言ってもらいたいか、それは、そういう時にどう対応するかの具体的なアドバイスがほしいということだったということです。逆に言えば、そういった時に精神論に走らず、具体的なアドバイスがしっかりできることが良い監督の条件の一つでもあるということだと思います。以前に、早稲田のラグビー部の名監督であった清宮監督と話をしたことを思い出します。清宮監督にどのようにアドバイスをするのかを聴いたところ、普通にこうした良いということを、いつもグランドで言うだけ。という答えでした。どうしたらよいかということをきちんと示せるということが大切だということだと思います。

今日の試合は、日本選手の活躍で、すべてストレート勝ちで、そんなことを考えるまもなく、スカッと終わりました。近藤先生に御礼のメールをして、平野選手の試合が見られたのが感激だったとお伝えしたところ、平野選手のサインを頂けることになりました!

2014年5月1日木曜日

向田邦子さんのこと (1)


向田邦子さんのエッセイ、父の詫び状を読みました。




私は、向田邦子さんの名前は勿論知っていましたが、彼女の作品を今まで一度も読んだことはありませんでした。更には、彼女が例えば、「寺内貫太郎一家」の脚本を書いたという認識もあまりなく、名前だけ知っている人という存在でした。

ところが、私の仕事机のそばに、家族の本が雑多においてある本棚があるのですが、そこに、この文庫本が置いていつからか置いてあります。多分、私の両親のうちのどちらかが読んだのではないかと思います。もしかしたら、昔それを私が持ってきてそこに置いたのかもしれません。いずれにしても、そこにあるなということは気づいていました。たまにパラっとめくってみましたが、もうページの周りは赤茶けた感じになっています。

この本とは別に、少し前に自分はページスキャナを買ったので、本を電子化して読むことに興味を持っていました。なにか、自分で電子化する適当な本がないかなと思い、目についたこの本を電子化してみようという気になりました。誰の持ち物である本かわからないものをカッターで背表紙を切ることに多少抵抗はありましたが、興味に惹かれてやっていました。それを見ていた子供が、自分の本も電子化されてはたまらんと思ったらしく、私に昔貸していた本を回収していきました。

文庫本を電子化する作業は、やってみると道具が揃っていれば30分ほどの作業です。面倒くさいので、どの本もやってみようとは思いませんが、それをスマートフォンで読むことには興味がありました。スマートフォンはいつでも持ち歩くので、読んでみようという気にもなり、PDFファイルに電子化する作業が完成すると、スマートフォンに移しました。スマートフォンの画面で、文庫本の1ページを読むのは小さすぎて読みにくいのですが、しかし、自分で作ったものなので、読まないともったいないというなんとも本末転倒な気分になり、是非これで読もうという気にもなって、意外と集中して読みました。

そして、読んでいけば読んでいくほど、向田邦子さんの人間的な魅力に興味を引かれたのです。