2014年4月20日日曜日

うつ病症状の男女差

一昨日4月18日に、甲府で、日本イーライ・リリーの主催でうつ病の痛みと睡眠障害の話をしました。この話は、これまでにも何度もしてきていますが、この講演会では、うつ病患者さんのアンケート調査を再解析しなおしたデータを含めてお話しました。この再解析では、うつ病における痛みと睡眠障害の関係を、男女に分けて解析しなおしています。うつ病は女性により多いことが知られていますが、この研究では症状に男女差があるかどうかを見たわけです。この結果は、現在論文にまとめている最中ですが、痛みの症状も、女性に多く見られました。男性の特徴は、痛みがあると入眠障害が増えるということです。これは、これまであまり知られていないことなので、この所見を含めて、論文にしようと思っています。

さて、このように、うつ病の症状に男女差があるのは、大変興味深いことです。このようなうつ病の症状の男女差については、痛みや睡眠障害だけでなく、その他の症状についてもあると思います。例えば、Kochklerら(2002)は、うつ病の周辺症状の男女差を調べて、女性では食欲不振がより多く見られ、男性では焦燥感が多いということでした。

Kahnら(2002)は、男女の二卵性双生児のペアで、双方がうつ病になった人たちを調べて、症状に差があるかを調べています。これによれば、疲労、過眠、精神運動抑制(動作が緩慢など)は女性に多く見られ、不眠や焦燥感は男性に多かったということでした。

この他にもRomansら(2007)の論文でも、女性では、食欲の増加、しばしば涙をながす、興味の喪失、自殺念慮が多いとしています。食欲の症状などは、Kochklerらとは違いがあり、調査による違いはあるようです。

我々の研究は、痛みと睡眠障害の男女差を見たものですが、様々な違いがあることが分かりました。これらについて詳細にまとめたらまた紹介したいと思います。


Int J Geriatr Psychiatry. 2002 Jan;17(1):65-72.
Gender differences of depressive symptoms in depressed and nondepressed elderly persons.
Kockler M1, Heun R.

Gender Differences in the Symptoms of Major Depression in Opposite-Sex Dizygotic Twin Pairs
Amir A. Khan, M.D.; Charles O. Gardner, Ph.D.; Carol A. Prescott, Ph.D.; Kenneth S. Kendler, M.D.
Am J Psychiatry 2002;159:1427-1429. doi:10.1176/appi.ajp.159.8.1427

Sarah E. Romans, MB, MD,* Jeanette Tyas, MHSc,† Marsha M. Cohen, MD, MHSc,*
and Trevor Silverstone, FRC Psych, DPM‡Gender Differences in the Symptoms of M ajor Depressive Disorder J Nerv Ment Dis 2007;195: 905–911

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